履歴書に「転居予定」があるときの基本方針
転居予定がある状況で履歴書を作成する際、多くの方が「正直に書くべきか」「選考に不利にならないか」と悩まれます。結論から申し上げると、転居予定は適切に記載すれば選考において不利になることはほとんどありません。むしろ誠実に伝えることで、採用担当者との信頼関係を築く第一歩となります。
転居先未定でも書ける?現住所と新住所の扱い
履歴書の住所欄には基本的に現住所を記載します。転居先が未定であっても、現時点で住民票がある住所を正確に書くことが原則です。住民票を移していない場合でも、実際に生活している住所を記載しましょう。郵便物が確実に届く住所であることが最も重要なポイントです。
転居先が決まっていない段階では、新住所を無理に記載する必要はありません。現住所と連絡先を正確に書き、本人希望欄や備考欄で転居予定がある旨を簡潔に記載する方法が安全です。住民票を移していない場合は、実際の居住地と住民票上の住所が異なることを面接時に説明できるよう準備しておくと安心です。
内定後速やかに転居可能/採用後転居予定と表現する際のポイント
本人希望欄に転居予定を記載する際は、前向きで具体的な表現を心がけましょう。「内定後速やかに転居可能です」「採用後、勤務地近郊への転居を予定しております」といった書き方が効果的です。
例文としては「採用の際には勤務地周辺への転居を予定しており、内定後1か月以内に転居可能です」「現在○○県在住ですが、採用決定後速やかに貴社勤務地近郊へ転居いたします」といった表現が適切です。転居への意欲と実現可能性を同時に示すことで、採用担当者に安心感を与えることができます。
通勤時間・勤務地への影響をどう示すか
転居予定がある場合、採用担当者が最も気にするのは「この人は本当に通勤できるのか」という点です。現住所からの通勤時間が2時間以上かかる場合は、転居予定を明記することで不安を解消できます。
通勤時間については「現住所からは通勤時間約2時間ですが、採用後は勤務地から30分圏内への転居を予定しております」といった具体的な記載が効果的です。交通費についても企業の規定を事前に確認し、必要に応じて面接時に相談できる準備をしておきましょう。配属先が複数ある企業の場合は、どの勤務地でも対応可能である旨を示すと好印象です。
履歴書の各項目ごとの安全な記載方法
履歴書は形式的な書類と思われがちですが、実は細かな記載方法によって印象が大きく変わります。ここでは各項目の正確な書き方を確認していきましょう。
住所欄の書き方
住所欄は都道府県から正確に記載することが基本です。都道府県、市区町村、町名、丁目、番地、マンション名や建物名、部屋番号まで省略せずに書きましょう。例えば「東京都渋谷区渋谷1丁目2番3号 渋谷マンション405号室」というように、郵便物が確実に届く形式で記載します。
丁目や番地は算用数字を使用し、ハイフンでつなぐ書き方も可能ですが、正式な書類では「1丁目2番3号」と記載する方が丁寧です。マンション名は省略せず、建物名も正確に記載しましょう。ふりがなを求められている場合は、都道府県名から建物名まですべてにふりがなを付けます。
本人希望欄での記載例と書き方
本人希望欄は転居予定を伝える最適な場所です。ここでは志望動機と混同せず、勤務条件や転居予定など実務的な希望事項を簡潔に記載します。
記載例としては「採用後、勤務地近郊への転居予定です。内定後1か月以内の転居が可能です」「現在遠方在住ですが、入社までに勤務地周辺へ転居いたします」といった表現が適切です。支援要望がある場合も、この欄で「引越し支援制度がございましたら、ご相談させていただきたく存じます」と控えめに記載することができます。
連絡先と封筒・ふりがなのチェックポイント
連絡先の電話番号とメールアドレスは、確実に連絡がつくものを記載しましょう。転居前後で変更の可能性がある場合は、携帯電話番号を優先的に記載することをおすすめします。メールアドレスは個人のものを使用し、就職活動専用のアドレスを用意すると管理しやすくなります。
封筒に履歴書を入れる際は、宛名を正確に記載し、「応募書類在中」と朱書きします。ふりがなは履歴書の指定に従い、ひらがなまたはカタカナで統一します。氏名、住所ともにふりがなの記載漏れがないか最終チェックを忘れずに行いましょう。
学歴・職歴欄への影響
転居が退職理由となる場合、職歴欄に「一身上の都合により退社」と記載するのが一般的です。ただし引っ越しが直接的な退職理由である場合は、面接時に「家庭の事情による転居のため」と説明することで理解を得やすくなります。
学歴欄については、卒業した学校の所在地が現住所と異なっていても問題ありません。むしろ地方の学校を卒業後に都市部で就職するケースは一般的であり、転居予定の理由として自然に受け止められます。職歴欄で複数回の転居が見られる場合は、転勤の多い業種であったことなど、合理的な説明ができるよう準備しておきましょう。
転居予定が「未定」「確定」「遠方」の場合
転居予定の状況は人それぞれ異なります。ここでは代表的な3つのケースについて、具体的な記載サンプルをご紹介します。
転居先未定だが応募する場合のテンプレートと記入例
転居先が具体的に決まっていない段階でも、転居の意思と実現可能性を示すことで不安を和らげることができます。本人希望欄には「採用の際には、勤務地周辺への転居を予定しております。転居先は内定後速やかに決定し、入社日までに転居を完了いたします」といった記載が効果的です。
もう少し簡潔な表現としては「採用決定後、貴社勤務地近郊へ転居予定です。入社日には通勤可能な状態でおります」という書き方もあります。重要なのは、転居が単なる希望ではなく実行可能な計画であることを示すことです。
転居予定日が決まっている場合の書き方と予定日の表記例
転居予定日が確定している場合は、その時点を明記することで信頼性が高まります。「2025年3月末に転居予定です」「2025年4月1日付で勤務地周辺への転居が確定しております」といった具体的な日付を記載しましょう。
時点の扱いについては、「○月末時点で」「○月初旬には」といった表現を使い、余裕を持った日程を示すことがポイントです。例えば入社日が4月1日の場合、「3月中旬には転居を完了し、入社日には勤務地近郊に居住しております」と記載すれば、採用担当者に安心感を与えることができます。
入社後に転居する/内定後速やかに転居可能と書くべきか
入社のタイミングと転居のタイミングは、企業側の期待と現実的な実行可能性のバランスを考えて記載する必要があります。「内定後速やかに転居可能」という表現は、採用担当者視点では非常にポジティブに受け取られます。
一方で「入社後に転居する」という書き方は、入社時点では遠方からの通勤になることを示唆するため、やや不安を与える可能性があります。できれば「入社日までには転居を完了いたします」「採用決定後、入社前に転居手続きを行います」といった、入社前に転居が完了することを明示する表現を選びましょう。
遠方へ転居予定で通勤が問題になるケースの例文と対策
現住所が勤務地から遠方にある場合、採用担当者は通勤の実現可能性を強く気にします。この場合の例文としては「現在は○○県在住ですが、採用の際には貴社勤務地である△△市内への転居を予定しております。転居後の通勤時間は30分程度を想定しております」といった具体的な記載が効果的です。
交通費については企業の規定を確認し、必要に応じて「交通費支給規定の範囲内での転居を予定しております」と付け加えることもできます。支援制度がある企業の場合は、「貴社の転居支援制度を活用させていただくことは可能でしょうか」と面接時に確認する準備をしておきましょう。
採用担当者・企業視点での評価と注意点
転居予定の記載について、採用担当者がどのような視点で評価しているかを理解することは、適切な書き方を考える上で非常に重要です。
履歴書の「転居予定」表記が与える印象とよくある誤解
採用担当者の多くは、転居予定の記載そのものをネガティブには捉えていません。むしろ遠方から応募してくる人材は、その企業や職種への強い意欲を持っていると前向きに評価されることも多いのです。人事の本音としては、「本当に転居できるのか」「入社後すぐに辞めないか」という実務的な確認がしたいというのが実情です。
よくある誤解として、「転居予定を書くと選考に不利になる」というものがありますが、これは必ずしも正しくありません。むしろ転居が必要な状況を隠して応募し、内定後に問題が発覚する方が企業との信頼関係を損ねます。誠実に状況を伝え、転居への具体的な計画を示すことで採用担当者からの信頼を得ることができます。
住民票・住所変更のタイミングと手続き
採用担当者が特に確認したいのは、入社時点での通勤可能性と住民票の移動タイミングです。多くの企業では入社時に住民票記載事項証明書などの提出を求めるため、住所変更の手続きがいつまでに完了するかは重要な情報となります。
面接時には「住民票の移動は○月中に完了予定です」「転居に伴う各種手続きは入社日の2週間前までに完了させます」といった具体的な説明ができると、採用担当者に安心感を与えることができます。また住民票を移していない期間がある場合は、その理由を簡潔に説明できるよう準備しておきましょう。
交通費や引越し補助の可能性と企業への問い合わせ方法
企業によっては、転居に伴う引越し費用の補助や入社前の住居探しサポートなどの制度を設けている場合があります。これらの情報は求人票に記載されていることもありますが、記載がない場合でも面接時に確認することは失礼にはあたりません。
担当者への連絡例としては、面接の最後に「御社では転居を伴う入社の場合、引越し支援制度などはございますでしょうか」と丁寧に尋ねる方法があります。また内定後であれば、「転居に関する御社の支援制度について、詳しくお伺いできますでしょうか」とメールで問い合わせることも可能です。遠慮せずに確認することで、スムーズな入社準備につながります。
選考を有利にするための補足テクニック
履歴書の記載内容だけでなく、志望動機の書き方や面接での説明方法も選考結果に影響します。ここでは選考を有利に進めるためのテクニックをご紹介します。
志望動機で勤務地意欲を示す書き方
志望動機には企業や職種への興味だけでなく、勤務地への前向きな姿勢を盛り込むことで、転居予定があってもプラスの印象を与えることができます。「貴社の○○事業に魅力を感じ、△△での勤務を強く希望しております」といった表現で、就職のドアを開ける第一歩となります。
具体例としては「貴社の□□プロジェクトに携わりたく、そのために△△への転居も含めて前向きに検討しております」「○○地域での事業展開に興味があり、現地での勤務を通じて貢献したいと考えております」といった書き方が効果的です。転居が障害ではなく、むしろ積極的な選択であることを示すことがポイントです。
面接での説明例と電話・メールでの連絡タイミング
面接で転居について質問された際は、具体的かつ前向きな説明を心がけましょう。「現在は実家に住んでおりますが、採用をいただけましたら○月中には勤務地周辺に転居する予定です。すでに不動産情報も確認しており、スムーズに転居できる見込みです」といった説明が理想的です。
採用担当者への印象管理という点では、連絡のタイミングも重要です。住所が変更になった場合は速やかに電話またはメールで連絡しましょう。「このたび転居が完了いたしましたので、新住所をご連絡いたします」と件名を明確にし、新旧の住所、変更日、連絡先を記載したメールを送ることで、誠実な印象を与えることができます。
封筒・ふりがな・算用数字・ハイフン・漢字の注意点
履歴書を提出する前に、細かな点までチェックすることで書類選考を通過する確率が高まります。封筒は白色の角形2号を使用し、宛名は黒のペンで丁寧に記載しましょう。裏面には自分の住所と氏名を忘れずに書きます。
ふりがなは指定された形式で統一し、算用数字は縦書きの場合は漢数字、横書きの場合はアラビア数字を使用するのが原則です。ハイフンの使用は住所の番地表記などで許容されていますが、正式な書類では「1丁目2番3号」と記載する方が丁寧です。漢字は常用漢字を使用し、旧字体や異体字は避けましょう。誤字脱字は致命的な印象を与えるため、提出前に複数回の確認が必要です。
履歴書・職務経歴書の記入例とダウンロード可能なテンプレート・サンプル案内
履歴書や職務経歴書のテンプレートは、厚生労働省のホームページや転職サイトで無料ダウンロードが可能です。転居予定がある場合の記入例も、多くの就職支援サイトで公開されています。
テンプレートを選ぶ際は、本人希望欄や備考欄が充実しているものを選ぶと転居予定について詳しく記載することができます。サンプルを参考にしながら、自分の状況に合わせてカスタマイズしていきましょう。記入例を見る際は、単にコピーするのではなく、表現の仕方や構成を学び、自分の言葉で書くことが大切です。
Q&A:よくある悩み・疑問への実用回答
転居予定がある場合の履歴書作成では、様々な疑問や不安が生じます。ここでは特に多く寄せられる質問について、実用的な回答をご紹介します。
住民票を移してない時は現住所をどう書くべきか
住民票を移していない場合でも、実際に生活している住所を履歴書に記載することが基本です。郵便物が確実に届く住所であることが最優先であり、住民票上の住所と異なる場合は面接時に説明できるよう準備しておきましょう。
手続きの注意点としては、内定後に企業から住民票記載事項証明書の提出を求められることがあります。その際に実際の居住地と住民票の住所が異なると手続きが煩雑になる可能性があるため、できるだけ早めに住民票を移動させることをおすすめします。やむを得ず移動できない期間がある場合は、その理由を正直に説明すれば、多くの企業は理解を示してくれます。
新居が複数候補/マンション名未定でも応募できる?
転居先の候補が複数ある段階でも、応募すること自体には何の問題もありません。本人希望欄には「採用の際には勤務地から通勤30分圏内への転居を予定しております。転居先は内定後に決定いたします」といった複数選択肢があることを示唆する書き方で対応できます。
マンション名が未定の場合も同様です。現時点での現住所を正確に記載し、転居予定については「○○市内への転居を予定しております。詳細な住所は決定次第ご連絡いたします」と記載すれば十分です。採用担当者が知りたいのは、通勤可能な範囲に転居する意思と計画があるかどうかであり、具体的な建物名まで求めているわけではありません。
結婚や介護など家庭事情で転居予定がある場合の配慮と説明方法
結婚や親の介護など、家庭事情による転居予定がある場合は、プライバシーに配慮しながらも必要な情報は伝えることが大切です。履歴書には「家庭の事情により○月に転居予定です」と簡潔に記載し、詳細は面接時に説明する方法が適切です。
採用側の判断材料としては、転居が一時的なものか永続的なものか、転居後の通勤や勤務に支障がないかという点が重要です。例えば結婚による転居であれば「結婚に伴い○月に転居予定ですが、勤務地までの通勤には問題ございません」と説明することで、仕事への影響がないことを明確に示すことができます。介護の場合も、勤務時間や勤務地への影響がないことを伝えれば、多くの企業は理解を示してくれます。
企業から住所変更の連絡が来たらどう対応するか
選考中や内定後に企業から住所変更について連絡が来た場合は、速やかに対応することが重要です。提出書類として新住所が記載された住民票や転居届の写しなどを求められることもあります。
更新日管理については、転居予定日を企業に伝えた際に、その日付をカレンダーに記録し、実際に転居した後は遅くとも3日以内に企業へ報告しましょう。メールでの報告の際は「このたび予定通り転居が完了いたしましたので、新住所をご報告いたします」と件名を明確にし、新住所、転居日、今後の連絡先を正確に記載します。書類の再提出が必要な場合も、指示に従って迅速に対応することで入社前から信頼関係を築くことができます。
転居先未定でも安心して応募するための最終チェックと次のステップ
ここまで転居予定がある場合の履歴書の書き方について詳しく解説してきました。最後に重要なポイントをまとめて、自信を持って応募できるよう整理していきましょう。
転居先未定でもこれだけ押さえればOK:必須チェックリスト
転居先が未定でも安心して応募するために、以下のポイントを確認しておきましょう。まず現住所を正確に記載し、郵便物が確実に届くようにすること。次に本人希望欄で転居予定と転居可能時期を明記すること。そして志望動機で勤務地への前向きな姿勢を示すことです。
応募前チェックとしては、連絡先の電話番号とメールアドレスが有効であることの確認、封筒の宛名と朱書きが正確であることの確認、ふりがなや算用数字の表記が統一されていることの確認が必要です。また転居に関する質問を想定し、面接での説明内容を事前に準備しておくことも重要なチェック項目となります。
履歴書作成のテンプレート・記入例まとめ
履歴書作成に不安がある場合は、信頼できるテンプレートや記入例を活用しましょう。厚生労働省のホームページには標準的な履歴書のフォーマットが用意されており、無料でダウンロードできます。転職サイトやキャリア支援サービスでも、転居予定がある場合の記入例を含む様々なサンプルが公開されています。
記載例ダウンロード案内としては、ハローワークのホームページや主要な転職サイトで「転居予定 履歴書 記入例」と検索すると、具体的なサンプルが見つかります。これらを参考にしながら、自分の状況に合わせてカスタマイズしていくことで、説得力のある履歴書を作成することができます。ただしサンプルをそのまま写すのではなく、自分の言葉で表現することを忘れないようにしましょう。
よくあるNG例と修正方法
最後に、転居予定を記載する際によくあるNG例と、その修正方法を確認しておきましょう。まず「転居するかもしれません」といった曖昧な表現は避けるべきです。「採用の際には転居いたします」と明確に記載することで、企業に安心感を与えることができます。
採用に響くミスとしては、現住所の記載が不正確である、転居予定について何も触れていない、通勤時間が明らかに問題なのに説明がないといったケースが挙げられます。これらの実例を避けるためには、書類を提出する前に第三者にチェックしてもらうことが効果的です。家族や友人、またはキャリアカウンセラーなどに確認してもらうことで、客観的な視点から改善点を見つけることができます。
転居予定があることは決してネガティブな要素ではありません。適切な書き方と誠実な姿勢で臨めば、むしろその企業や職種への強い意欲の証として評価されることもあります。この記事で紹介した方法を参考に、自信を持って履歴書を作成し、理想の職場への第一歩を踏み出してください。転居先が未定でも、しっかりとした準備と前向きな姿勢があれば、必ず道は開けます。応募書類の作成から面接まで、一つひとつのステップを丁寧に進めていきましょう。









