転職や就職で企業を選ぶとき、「残業が少ない会社で働きたい」と考える人は多いでしょう。求人票には「月平均残業時間10時間」「残業少なめ」といった情報が掲載されていることがあります。しかし、その数字だけを見て入社を決めると、入社後に「思っていたより忙しい」と感じる可能性があります。
企業の残業時間は、会社全体の平均だけでは実態を把握しにくいからです。同じ会社でも部署や職種によって残業時間が大きく異なる場合があります。また、通常期と繁忙期で勤務時間が変わるケースや、固定残業代が設定されているケースもあります。
そこで重要になるのが、複数の情報源を組み合わせて企業の残業時間を調べることです。企業サイトや求人票だけでなく、公的統計、口コミ、面接での質問、36協定などを確認すると、入社後の働き方をより具体的にイメージできます。
この記事では、企業の残業時間の調べ方について、求人票の見方から面接での質問方法、36協定や勤怠管理まで詳しく解説します。
入社前に企業の本当の残業時間を知る方法|求人票の平均だけで判断しない
企業の残業時間を調べるときは、求人票に掲載された数字を出発点にしながらも、それだけで判断しないことが大切です。平均残業時間は便利な情報ですが、あくまで一定の集団を平均した数字だからです。
企業の残業時間を調べる前に知っておきたい「平均時間」の落とし穴
例えば「平均残業時間が月15時間」と書かれていても、自分が配属される部署の残業時間が15時間とは限りません。営業職だけが月30時間で、管理部門は月5時間というように、職種によって大きな差がある可能性があります。
また、平均値には残業がほとんどない人と、繁忙期に長時間働く人の両方が含まれています。そのため、平均残業時間だけを見て「毎月この程度の残業で済む」と考えるのは危険です。
企業の残業時間の調べ方では、「その数字が誰を対象に、どの期間で、どのように集計されたものなのか」を確認することが重要です。
残業が多い職種・業界・業種と、仕事や勤務形態による違い
残業時間は、業界や業種だけでなく、担当する仕事によっても変わります。納期が設定されている仕事では、締切前に業務量が増えることがあります。顧客対応が中心の仕事では、顧客の営業時間に合わせて勤務時間が後ろにずれることもあります。
さらに、交代勤務、シフト勤務、フレックスタイム制、裁量労働制など、勤務形態によっても働き方は変わります。
そのため、企業の残業時間を比較するときは、「業界全体の平均」と「自分が担当する予定の仕事」を分けて考える必要があります。自分と同じ職種、同じ勤務形態の人が実際にどの程度残業しているのかを確認することが、より現実的な調べ方です。
入社後の長時間労働を防ぐために、職場の働き方と業務実態を把握する
残業時間を調べる目的は、単に少ない会社を探すことではありません。自分が入社した場合に、どのような働き方になるのかを把握することが重要です。
定時後に会議が入るのか、始業前に準備作業があるのか、繁忙期にはどれくらい忙しくなるのかなども確認しておきたいポイントです。
厚生労働省のガイドラインでは、使用者の指揮命令下に置かれている時間は労働時間に当たり、始業・終業時刻を適正に把握することが求められています。企業の残業時間を調べる際には、単純な「残業」という言葉だけでなく、実際にどの時間が労働時間として管理されているのかにも注目しましょう。
企業の残業時間を調べる基本的なデータと調査先
企業の残業時間を調べる場合、最初から一つの情報源だけに絞る必要はありません。企業が公表する情報と、公的な統計、さらに現場に近い情報を組み合わせることで、数字の意味を判断しやすくなります。
企業サイト・求人票・就職情報で確認できる残業時間のデータ
最初に確認したいのは、企業の採用ページや求人票です。「月平均所定外労働時間」「平均残業時間」「時間外労働」などの表記がないか確認します。
ただし、「残業ほぼなし」「ワークライフバランス良好」といった表現だけでは具体的な時間は分かりません。数字が掲載されている場合でも、対象となる職種や期間を確認することが重要です。
企業によっては採用情報だけでなく、統合報告書やサステナビリティ関連資料などで労働時間に関する情報を公開していることもあります。
厚生労働省や民間の統計データで残業時間の平均を比較する
企業単体の数字を見ても、それが多いのか少ないのか判断しにくいことがあります。その場合は、公的統計を比較材料として利用できます。
厚生労働省の「毎月勤労統計調査」では、所定内労働時間や所定外労働時間などが公表されています。2025年分の結果も公開されており、企業の数字を見る際の基準を考える材料になります。
また、「就労条件総合調査」では、企業の労働時間制度などについて調査されています。2025年の調査は全国の民間企業を対象とし、複数の産業について労働条件を調べています。
こうした統計は特定企業の実態を示すものではありませんが、企業の求人情報を比較するときの背景データとして役立ちます。
口コミ・面接・現場の情報から残業の発生理由と実態を調査する
求人票の数字と合わせて確認したいのが、実際に働いている人の情報です。転職サイトなどの口コミでは、「繁忙期だけ残業が増える」「部署によって違う」といった具体的な情報が見つかることがあります。
ただし、口コミは個人の経験であり、現在の職場全体を代表するとは限りません。投稿された時期や所属部署にも注意しましょう。
面接では、残業時間そのものだけでなく、「残業が発生するのはどのような時期ですか」「配属予定部署では通常何時ごろまで勤務することが多いですか」と聞くことで、数字の背景を確認できます。
求人票の残業時間を正しく比較する計算方法
企業の残業時間を比較するときには、単純に「10時間」と「20時間」を比べるだけでは不十分です。何を残業時間として集計しているのかを確認する必要があります。
月間の残業時間と所定外労働時間・時間外労働の違いを確認する
求人票では「残業時間」という言葉が使われていても、実際には「所定外労働時間」など別の指標が掲載されていることがあります。
法定労働時間は原則として1日8時間、1週40時間です。これを超える労働が法定時間外労働に当たり、36協定などのルールが関係します。一方、会社が定めた所定労働時間を超えていても、法定労働時間の範囲内であれば、必ずしも法定時間外労働とは限りません。
そのため、「月20時間」という数字を見つけたら、それが所定外労働なのか、法定時間外労働なのかを確認すると比較しやすくなります。
残業代・法定労働時間・所定労働時間から残業時間を計算する
残業時間を考える際は、給与との関係も確認しましょう。基本給とは別に固定残業代が設定されている場合、「残業代込みの月給」になっていることがあります。
固定残業代が30時間分設定されているからといって、毎月30時間残業するとは限りません。一方で、固定残業時間を超えた場合の追加支給についても確認が必要です。
求人票の月給だけを比較するのではなく、所定労働時間、固定残業時間、固定残業代、超過分の扱いまで確認することで、実際の労働条件を比較しやすくなります。
固定残業代やパートの勤務時間を含めて企業の条件を比較する
企業によっては正社員だけでなく、パートや契約社員など複数の雇用形態が存在します。統計によってはパートタイム労働者を含む場合もあるため、企業独自の数字と公的統計を比較するときは対象者の違いに注意が必要です。
また、同じ会社でも正社員とパートでは勤務時間が異なります。自分が応募する雇用形態と同じ条件のデータなのかを確認しましょう。
勤怠データと管理システムから本当の残業時間を把握する
企業の「本当の残業時間」を最も具体的に把握できるのは、実際の勤怠データです。ただし、入社前の応募者が企業内部の勤怠データを直接確認できるケースは一般的ではありません。
だからこそ、入社前には「どのように勤怠を管理している会社なのか」を確認することがポイントになります。
勤怠管理の打刻・申請・集計から実際の労働時間を算出する
勤怠管理では、タイムカードやICカード、パソコンの使用記録などを利用して始業・終業時刻を確認する方法があります。厚生労働省も、労働時間を適正に把握する方法として客観的な記録を基礎とすることを示しています。
そのため、企業の残業時間を調べるときは「勤怠はどのように管理していますか」と質問することにも意味があります。
企業が勤怠管理システムを導入するメリットと残業削減への活用
勤怠管理システムを導入すると、従業員の勤務時間を記録・集計しやすくなります。管理者が残業時間を把握しやすくなれば、特定の社員に業務が集中していないか、長時間労働が続いていないかを確認する材料にもなります。
ただし、システムを導入しているだけで残業が少ないとは限りません。重要なのは、記録されたデータをもとに企業がどのような改善を行っているかです。
労務担当者に確認したい自社の残業管理とデータの見方
面接やオファー面談などで質問できる場合は、残業時間の集計方法を確認してみましょう。「平均残業時間はどの期間を対象にしていますか」「配属予定部署の平均も同じですか」と聞くと、求人票の数字をより具体的に理解できます。
企業側が具体的なデータや集計方法を説明してくれる場合は、数字の背景も確認しやすくなります。
面接で企業の残業時間と職場の実態を聞き出す質問
企業の残業時間の調べ方として、面接は非常に重要な機会です。ただし、「残業は多いですか」とだけ聞くと、「時期によります」といった回答で終わってしまうことがあります。
「平均残業時間」だけでなく繁忙期・通常期の時間を具体的に聞く
「平均残業時間はどれくらいですか」という質問に加えて、「通常期と繁忙期ではどれくらい違いますか」と聞くと、より具体的な情報を得やすくなります。
例えば平均10時間でも、通常期はほぼ定時で、繁忙期だけ月30時間になる場合があります。逆に、毎月安定して10時間程度という会社もあります。自分が無理なく働けるかを考えるためには、平均値だけでなく変動幅を知ることが重要です。
残業が発生する業務・理由・事前承認のルールを確認する
「どのような業務で残業が発生しますか」と質問すると、仕事量の実態が見えやすくなります。
さらに、残業に事前申請や上司の承認が必要なのか、繁忙期に応援体制があるのかなどを確認すると、会社の残業管理に対する考え方も分かります。
休日出勤・持ち帰り仕事・勤務形態と職場の働き方を質問する
残業時間だけでは、実際の負担を判断できない場合があります。休日出勤の有無や、勤務時間外にメールやチャットへの対応が求められるのかも確認しておきたいところです。
「休日出勤は年間でどの程度ありますか」「勤務時間外に対応することはありますか」といった聞き方なら、働き方を具体的に確認できます。
36協定・上限規制から企業の残業リスクを確認する
企業の残業時間を調べる際には、36協定についても知っておきましょう。36協定は、法定労働時間を超えて時間外労働をさせる場合などに関係する労使協定です。
36協定の締結と時間外労働の法定上限を入社前に確認する
時間外労働の上限は原則として月45時間、年360時間です。臨時的な特別の事情がある場合には特別条項付き36協定を締結できますが、一定の上限があります。
企業を見るときは、「残業が何時間まで可能か」だけでなく、実際にどの程度の残業が発生しているのかを確認することが重要です。
特別条項の有無・適用範囲・上限時間が労働者に与える影響
特別条項がある企業では、臨時的な事情がある場合に通常の限度時間を超える時間外労働が可能になります。ただし、特別条項があること自体が、常に長時間残業が発生していることを意味するわけではありません。
重要なのは、その制度が実際にどの程度使われているのか、どの部署や業務が対象になるのかです。
長時間労働を防ぐ企業の対策・措置・制度と働き方改革の推進状況
残業時間を確認するときは、企業が長時間労働を減らすために何をしているかにも注目しましょう。
勤怠データの確認、残業の事前承認、業務の分担、ノー残業デー、管理職による労働時間のチェックなどがあります。制度の名前だけではなく、それが実際に運用されているかを確認することが大切です。
残業時間が多い企業を見分けるチェックリスト
企業の残業時間を調べる際は、単一の数字だけで判断しないことが基本です。求人票の残業時間、面接での回答、口コミ、公的統計などを照らし合わせることで、情報の一貫性を確認できます。
残業時間・残業代・勤怠管理の説明が具体的かを確認する
「残業少なめ」という説明だけではなく、「月平均何時間なのか」「固定残業代は何時間分なのか」「超過した場合はどうなるのか」まで確認しましょう。
また、勤怠管理について具体的な説明があるかもポイントです。始業・終業時刻をタイムカードやICカードなどの客観的な記録で管理することは、厚生労働省のガイドラインでも示されています。
職種・業界・業種・勤務形態ごとの残業時間を自分の仕事と比較する
会社全体の平均ではなく、自分が応募する職種と近い条件で比較しましょう。
営業職なら営業職、エンジニアならエンジニアというように、できるだけ仕事内容が近い情報を集めることで、会社全体の平均によるズレを小さくできます。
調査データの対象期間・集計単位・労働者の範囲を確認する
「平均残業時間」という数字を見つけたら、その数字がいつのものなのか、何人を対象としているのか、正社員だけなのか、パートなども含むのかを確認しましょう。
厚生労働省の統計でも、調査対象や事業所規模などによって集計区分が設けられています。統計を比較するときは、数字だけでなく対象範囲を見ることが大切です。
入社前の残業調査を就職先選びに活かす方法
企業の残業時間を調べる目的は、残業時間の少なさだけで会社を判断することではありません。給与や仕事内容、成長機会などと合わせて、自分が希望する働き方に合っているかを考えることが大切です。
複数の企業を平均時間・業務内容・働き方で比較して選択する
転職活動では、複数の企業について同じ項目を確認すると比較しやすくなります。
求人票の平均残業時間を確認したうえで、面接で繁忙期の残業時間や休日出勤について質問します。そのうえで口コミや公的統計を参考にすると、企業ごとの違いが見えやすくなります。
残業削減の取組・管理システム・制度導入による改善を確認する
現在の残業時間だけでなく、過去と比べて改善しているかを見ることも大切です。
「以前より残業時間が減った」という会社であれば、なぜ減ったのかを確認してみましょう。勤怠管理システムの導入や業務効率化、人員配置の見直しなど、具体的な取り組みが分かれば、今後の働き方をイメージする材料になります。
残業時間だけでなく給与・健康・成長機会への影響とリスクを判断する
残業時間は給与にも生活時間にも関係します。残業代によって収入が増える場合でも、長時間労働が続けば自由時間や休息時間が減ることになります。
反対に、残業が少ないことだけを理由に仕事内容や給与条件を確認しないのも避けたいところです。残業時間は、給与、休日、仕事内容、キャリア形成などと一緒に考えることで、自分に合った働き方を判断しやすくなります。
企業の本当の残業時間を知るための最終確認
入社前に企業の残業時間を完全に把握することは簡単ではありません。実際の勤怠データは社内情報であり、応募者がすべて確認できるとは限らないからです。
だからこそ、複数の情報を組み合わせて「求人票の数字が実際の働き方と矛盾していないか」を確認することが重要です。
厚生労働省の統計と企業の説明を組み合わせて残業の実態を把握する
企業の求人票に掲載された残業時間だけを見るのではなく、厚生労働省の統計で業界や労働時間の全体的な傾向を確認し、企業の説明と比較してみましょう。
厚生労働省では毎月勤労統計調査などを継続的に公表しているため、企業独自の数字を見る際の参考資料として活用できます。
必要なデータが得られない企業や説明を避ける企業には注意する
企業が残業時間について具体的な数字を公表していないことだけで、長時間労働の会社だと判断することはできません。しかし、面接などで質問しても、平均時間や繁忙期、残業代、勤怠管理について具体的な説明がほとんど得られない場合は、ほかの情報源も使って慎重に確認したほうがよいでしょう。
特に「残業は人によります」「その部署次第です」といった回答だけで終わる場合は、追加で「配属予定の部署ではどうですか」「繁忙期は月何時間程度ですか」と具体化して聞いてみると、情報を集めやすくなります。
職場の労働環境を見極め、納得できる働き方を選ぶ
入社前に企業の本当の残業時間を完全に知ることは難しいからこそ、一つの数字に頼らないことが大切です。
企業の残業時間の調べ方としては、まず求人票や企業サイトで公表されている数字を確認し、次に厚生労働省などの公的統計と比較します。そのうえで口コミや面接で現場の情報を集め、繁忙期の残業、休日出勤、固定残業代、勤怠管理、36協定などを確認すると、より具体的な働き方が見えてきます。
特に重要なのは、「平均残業時間が何時間か」だけではありません。その残業がなぜ発生しているのか、どの部署で多いのか、繁忙期にはどれくらい増えるのか、会社がどのように管理しているのかまで確認することです。
入社後に「こんなに残業があるとは思わなかった」と後悔しないためにも、求人票の数字を鵜呑みにせず、複数の情報を照らし合わせて判断しましょう。企業 残業時間 調べ方を知っておけば、求人情報に書かれた数字の意味を読み解き、自分が希望する働き方に合った企業を探しやすくなります。









